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NISの模擬国連への参加はおよそ30年前から続いています。そしてそれはコロナ禍の今年も例外ではありません。NISの代表団は今年も、ビジネススーツに身を包み、ハーグ国際模擬国連に参加しました。シンガポールへと赴くことはかないませんでしたが、東棟新校舎の多目的スペース、カワナベ・ルームからオンラインで。何ヶ月にもわたり下調べや練習を重ね、討論、折衝力を磨いてきた成果を発揮するときが来たのです。
模擬国連においては、実際の国連と同様に、各国の代表団となった生徒たちが現実の国際問題を討議し、解決策を模索します。模擬国連の重要な要素のひとつは、それぞれの学校が所在する国とは異なる国の代表団となることです。今年は、NISはサウジアラビアの代表団として各委員会において様々な問題について討議に参加しました。「サウジアラビアの代表というのはとても独特で興味深い体験でした。他の国とは非常に価値観が異なる国なので。私個人の価値観とも違うところがあります。」と、参加したある生徒が言うように、これはNIS代表団がこの湾岸の一国の観点に立つにあたり、生徒の多くが共有する思いでした。
環境問題、経済問題、法務及び財務などについて討議する委員会ごとに分かれた生徒代表団は、それぞれの分野について掘り下げて調査しました。現実的で意義のある決議案の作成を目指し、サウジアラビアの視点から討議に参加しました。ある生徒は自身の経験を語ります。「私にとって一番思い出深いのは、気候変動対策に経済的利益を最優先しつつ取り組むことを目指す決議案でした。私個人の見解は捨て、サウジアラビアの視点で考えるという点で、草案にはとても苦労しました。修正された決議案に私個人としては賛成でしたが、サウジアラビアの立場に立たなければならなかったため、反対票を投じました。」
NIS代表団の生徒たちは、1週間にわたり決議プロセスへの理解を深め、積極的にロビー活動や討議に参加しました。他者の立場に立つということは、他者(他国)の考えや感情への共感や思いやりを一層深めることにつながります。こんな経験を語ってくれた生徒もいます。「サウジアラビアが起草に参加した決議案の中には、これまで自分が見た中でも最高の出来栄えのものがあります。ある議題について各国の代表が熱い議論を交わした結果です。模擬国連では、ある議題に関心を持つ国が集まりますが、必ずしも同じ見解を共有している訳ではないので、譲歩や妥協が必要になってくるのです。」
今年の模擬国連はいろんな意味でNISにとって初物尽くしでした。オンラインで開催されたこともそうですが、もうひとつは中等部の生徒にも見学の機会が与えられたことです。前年度、NIS代表団から3人の生徒がCASプロジェクト*として、1週間にわたる中等部の模擬国連を計画していました。残念ながら新型コロナウィルスのために実施はかないませんでしたが、彼らの創造性と思考力はこのピンチをチャンスに変えました。期間中の最後の2日間、7年生と8年生のための模擬国連オリエンテーションを実施したのです。実際にオンライン模擬国連が開催中の会場に中学生を招き、決議案通過のプロセスなどについて説明し、討議の様子を見せました。その模様はこちらでご覧いただけます。この経験は間違いなく多くの中学生に影響を与えたようで、彼らの熱意でNIS模擬国連がさらに活性化することでしょう。
リサーチ力、分析力、協調性、スピーチ力などのスキルや人間性を磨くために訓練を重ねたことは、必ず将来、現実の世界で役立ちます。顧問の私も林田先生も、彼らの熱意とここに至るまで積み重ねた準備や全ての過程に注いだ努力を誇りに思います。思慮深く、思いやりがあり、熱心で協力的で、勇気に溢れた生徒たちです。エネルギー、熱意、そして学びのつまったエキサイティングで楽しい1週間でした。生徒の言葉を借りれば、「模擬国連はディベートでストレスがたまる1週間と思われがちですがそれだけではありません。濃密で刺激的で、経験と素晴らしい思い出に満ちた1週間でもあります。視野を広げ、グローバルな問題を認識し、よりよい未来のために立ち向かう1週間なのです。」まさにその通りではありませんか。
*CASプロジェクト:国際バカロレアディプロマプログラムの必修要件のひとつ。Creativity, Action, and Service (創造性、活動、奉仕)の略称で、生徒が独自に創造的な芸術活動、身体的活動、ボランティア活動などに取り組むプロジェクト