生徒自身が学習者として自らの学習に責任を持ち、学習の過程を自己評価し、学習目標を定めることも学びのプロセスの一部であるーこのことは国際バカロレアプログラムの正式認可校であるNISが非常に大切にしている信念のひとつです。そのための重要な機会である「三者面談」では、学習全般や各自の学習目標について、生徒、保護者、教師が話し合います。面談では、生徒の得意分野、改善を要するポイントについて三者が認識を共有するとともに、新たな目標を設定し、その目標の実現に向けどうすべきかについての話し合いにも発展します。
面談に向けた準備が始まると、生徒たちは教師の指導のもと、学年度開始からこれまでを振り返り、得意な分野、成長できたと思う分野を特定します。そして、それらの分野がなぜ他の分野よりもよく出来たと思うのか、その分野をさらに改善し、伸ばせるようにするためにはどうすべきかを考え、目標を設定します。教師は、それぞれの生徒が明確で実現可能な学習計画を立てられるよう、教師としての視点やデータを踏まえたアドバイスを交えながらサポートします。
面談は、理科、美術、算数、言語(英語・日本語)といった主要科目が中心ですが、生徒は各自のATL(学習の方法)について振り返り、自己評価することが求められます。ATLとは、社会性、コミュニケーション、思考力、リサーチ力、自己管理能力などの学習の過程において重要なスキルです。生徒はこれらのスキルを培うことで、生涯にわたり学びつづけ、めまぐるしく変化を続ける世界に順応し、活路を開くことのできる人間に成長することができるのです。例えばある特定の分野を苦手とする生徒がいた場合、実は時間管理やグループでの話し合いにおけるスキルを学ぶことが効果的な場合もあります。これらの面談において、特定の科目における知識の習得と理解の向上と同時に、全ての学習分野において必要となる学習スキルの向上にも重点を置くことで、生徒たちはバランスのとれた学習目標を設定することが出来るのです。
学習目標の多くは、自宅で保護者の協力のもとに達成に向け取り組むことが出来る事項です。聞く力を伸ばすことを目標に掲げた生徒なら、複数のステップを要する作業をひとりでやり遂げる練習が役立つでしょう。同様に、メディアリテラシーやリサーチスキルを伸ばしたいなら、興味のある分野について調べ、どのような媒体が情報源として適切であるかを話し合うのもいいでしょう。これらは身の回りにあふれる学習機会のほんの一例ですが、三者面談での話し合いを受け、家庭においてこうした生きた学習が数多く実践されることを願っています。
今年の三者面談は、感染症対策のため、初めてオンラインでの開催となりました。保護者と校内の学習スペースを共有出来ないのは残念ですが、一方でこれは子どもの学習における学校と家庭の関係を改めて強調する絶好の機会であると捉えています。生徒も保護者も、自宅から面談に参加した経験を通して、教育の場は学校に留まらないという認識が新たになったのではないでしょうか。三者面談、それは、生徒の成長と学習成果を称え、自己評価を通し更なる成長を目指す、学習において最も重要な三者(教師、生徒、保護者)の共同作業なのですから。