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世の中に たえて桜のなかりせば 春のこころは のどけからまし*
平安時代の歌人、在原業平のこの歌は1000年以上の時を超えても変わらない日本人の桜への思いをよく表しています。穏やかな春の日差しの中、満開になった桜の花びらがひらひらと風に舞う様子はいかにものどかで穏やかな春の情景です。しかし、桜の開花を待ち焦がれ、満開の桜に浮き立つ気持ちがむしろ人の心を落ち着かなくする、というこの歌は、いかに桜が日本人にとって特別なものであるかを物語っています。冬の寒さがまだ残る3月、桜の蕾がまだ膨らみ始める前から桜前線が登場し、開花や満開の時期の予想に心を弾ませ、お花見の予定を立てるのも日本独特の文化です。
日本人がこれほどまでに桜を愛する理由はたくさんあります。満開の桜の美しさももちろんですが、桜が春の訪れを告げる花であることが大きな理由の一つでしょう。寒い冬が終わり、命が芽吹く春を象徴するのが桜です。そして春、つまり3月や4月は日本では卒業、入学、転勤など、別れや新生活の始まりなど、人生の節目を迎える季節でもあり、春は日本人にとって特別な季節なのです。
また、日本人が桜を好むのは、日本人の精神性も関係していると言われています。冬の厳しい寒さに耐え、あんなに待ち焦がれてようやく咲いた桜も、咲き始めてから2週間ほどで散ってしまいます。その儚さが、この世には永遠不変のものはないという仏教の無常感と重なります。また、満開となりその美しさが絶頂を迎えた途端に花の命が終わりを迎え、朽ちて醜い姿を見せることもなく静かに散っていく、その様子の美しさと潔さも、散り際を尊ぶ武士道精神にも通じているのでしょう。
「さくら」という言葉は、山や田の神様である「サ」神の「クラ」(神様の台座)、つまり、神様が宿る木を意味する、と言われているのだそうです。冬の間は山に帰っておられた神様が、里に戻り桜の木に宿り、桜の花の蕾が膨らみ、やがて開花を迎えます。
古代の日本人はこの桜の開花を農耕における指標としていたようで、現在も日本のあちこちに「種まき桜」や「田植え桜」と呼ばれる桜の木があります。暦や温度計のなかった時代の人々にとって、桜の開花は春の訪れとともに、農作業の開始を告げる神様からのサインでもあったのでしょう。
そして神様の宿る桜の木の下にご馳走やお酒を持って集まり、豊作祈願をしたのがお花見の始まりなのだそうです。コロナ禍の今はお花見の宴会も出来なくなってしまいましたが、桜の下で集まってお酒を飲むのは意味のあることだったのですね。
今年も間もなく桜の季節を迎えます。今年の開花予想は3月22日頃、満開は3月30日頃とのことです。名古屋近郊にもいくつか有名なお花見スポットがありますが、ここではNISに近いお花見スポットをご紹介します。
城土公園と白沢渓谷 (名古屋市守山区)
吊り橋のある川のほとりにある小さな公園に覆いかぶさるように桜が咲きます。隣を走るゆとりーとラインの車窓から見下ろす満開の桜は絶景です。
東谷山フルーツパーク(名古屋市守山区)
鮮やかなピンク色の花が滝のように垂れ下がる枝垂れ桜が有名です。
水道みちの桜並木 (春日井市)
約2キロの遊歩道の両側に立つ桜並木が見事な桜のトンネルを作ります。
香流川の桜並木 (名古屋市名東区)
香流川の両岸に約2キロに渡って続く桜並木です。桜の木の下は遊歩道が整備されており、のんびりと散策することが出来ます。
公園
広い芝生のある公園でお花見をしながらピクニックはいかがですか? エリア内で代表的な公園としては、森林公園(尾張旭市)、 城山公園 (尾張旭市)、 小幡緑地公園 (名古屋市守山区)、 落合公園 (春日井市)などがあります。
NISのプレイグラウンド
NISでいちばんの桜の絶景スポットはどこかご存じですか? それはフィールドハウスの2階へ続く階段から見下ろすプレイグラウンドの桜です。あるいは、レイモンドビル2階の校長室の窓からは、プレイグラウンドの桜も、バートンガーテンの桜も見渡すことが出来ます。校長室に入ることがあったら眺めてみてください。
*この世に桜が存在しなかったら、春を迎える心はもっと穏やかであっただろうに