私がいつも学校見学に初めていらしたご家族にお尋ねする最初の質問です。この質問に対するお答えはご家族によってかなり異なります。「英語を話せる大人になってほしい」「国際社会で生きていくために必要なスキルと能力を備えさせたい」「みんな同じがあたり前の日本の教育にうちの子は向かないのではないかと思っている」等。
名古屋国際学園(NIS)で入学を担当して4年半。色々なご家族にお会いし、入学に関するご質問やご不安についてお話をお聞きしてきました。そこで今回は、学校見学において日本人のご家族からよく尋ねられる5つの質問をご紹介したいと思います。
NISは英語で授業を行っているインターナショナルスクールですので、英語で展開される授業を理解し、課題をこなすのに十分な英語力が必要になります。NISの教育を受けることによって、将来の夢に向かって邁進することができる実力と自信を兼ね備えられるようになるためには、お子様の該当される学年の授業についていけるレベルの英語力が入学時に必要になります。入学時の学年にもよりますが、日本人生徒が該当学年の授業についていける英語力を身につけるには、海外などの日本語が通じない環境で2年くらい英語で勉強した経験が必要になると思います。
ほかにも英語力についての質問としては、週2回、英会話に通っています、英検◯◯級を取得しています、テレビも英語でよく見ています、このような英語力を持っていれば、NISの授業にもついて行けますかというような質問を受けることがあります。残念ですが、そのようなレベルでは入学は難しいと言わざるを得ません。NISのカリキュラムである国際バカロレア(IB)では生徒一人一人が主体的に学習に取り組む姿勢を大切にしています。そのため、NISの授業は教師が知識を伝えるだけでなく、生徒たちが問題意識や疑問に思ったことに対して、情報収集 ・分析し、自分の意見をまとめながら学習を深めるスタイルが中心です。このような学習において、Reading とWritingの力は大変重要です。このNISで求められるReading とWritingのスキルは英会話や英検のための学習、ましてやテレビを見ただけで身につけることはできません。あくまでも一例ですが、ハリー・ポッターシリーズですと、多くの生徒が5年生までに全巻読み終えます。また、Writingにおいても、Descriptive(説明型)、 Persuasive (説得型)、 Narrative (物語型)など、目的や形式に合わせた書き方を低学年から学んでいます。
ただ、まれに海外経験等が2年以下であっても学年相当の英語力を身につけられているお子様もいます。そのため、お子様の経験や書類審査で判断することが難しい場合は、入学希望者に対し入学審査過程の1つとして英語力のテストを実施しています。EAL (English as Additional Language)を担当している教員がスクリーニングテストを実施し、該当学年の英語力をお持ちかどうか審査しています。
保護者の英語に対する漠然とした不安はかなりよく耳にします。こんな不安をお聞きした時、次のようにお答えし、反対に私から質問しています。「入学審査において、保護者の英語力を審査対象にすることはありません。しかし、入学審査として面接がありますが、その面接には保護者にも参加していただきます。面接官は全く日本語を理解しない教頭ですので、面接の言語は英語です。そこで国際教育を希望される理由やご家庭でのお子様について質問されるかもしれません。また、一旦NISでの学校生活をスタートすると、学校からのお知らせは基本的に全て英語ですし、先生とのやりとりももちろん英語になります。このような環境下であるインターナショナルスクールで保護者としてどのように対応されるおつもりですか?」と。
ちょっと意地悪に思われるかもしれませんが、最後の質問の部分には、主体的に学ぶことを求めるNISでの教育をご希望されるご家族だからこそ、保護者にもお子様の教育に積極的に携わっていただき、インターナショナルスクールだからこそできる経験や学びの機会を大いに活用していただきたいという思いからの質問です。
決して流暢な英語で対応しなくてはならないということではなく、お子様の教育に携わる一員として、学校と協力していこうという意思を示していただくコミュニケーション能力は必要と思っていただきたいのです。具体的には、先生や他の保護者が英語で話している内容がある程度把握出来るリスニング力、学校からのお知らせを理解できるリーディング力、先生に用事や質問などをメールで連絡できるライティング力が保護者にも求められると思います。ただ、最近は優れた翻訳機能(Google TranslateやDeep L)などもありますので、リーディングやライティングはそのような機能を駆使することである程度コミュニケーションをとることができると思います。また面談の時に同時通訳ができる機械を持ち込まれるご家族もいらっしゃいます。英語に自信がないという理由で、学校とのコミュニケーションを諦めてしまうのではなく、どうしたら学校からの連絡を理解できるか、そしてお子様について気になることなどを先生にお伝え出来るか、ご自分のペースで良いので模索していっていただけたらと思います。
より詳しくはこちらをご覧ください。(インターナショナルスクールについての素朴な疑問 1 ー 保護者も英語力が必要?)
NISでは全ての授業が英語で行われますが、世界中のインターナショナルスクールと同じように、現地の文化や言語を学ぶことを重要視しています。そのため、NISでは日本語を外国語の必修科目としています。日本語の授業はレベル別(3レベル)で行われ、上級レベルでは文科省の教科書を使います。しかし、日本の学校と比べると日本語に触れる機会が圧倒的に少ないため、日本語力の強化には工夫と努力が必要です。その一方で日本人としてのアイデンティティの確立という観点から日本語で自己表現できるようになるということは大変重要です。そこで、NISの教員達はご家庭での学習活動として、学校で学んできたことを日本語で説明したり、保護者と議論を交わすことを奨励しています。テレビのニュースを見て、時事問題について日本語で話し合うことを日常的に行っているご家族も多いようです。その他に、家庭教師や塾に通い、日本語の力を強化しているご家族もいます。各ご家庭で日本語力を高める工夫をしているのが現状です。
NISではいつでも英語を話さなくてはならない、日本語や特定の言語を話してはいけないと言ったルールはありません。誰にとっても心許せる友達と一番自分らしく話せる言語で何気ないおしゃべりをするというのはなんとも楽しいひとときだと思います。そのため、NISのお休み時間には日本語はもちろん、韓国語、中国語、ポルトガル語、フランス語など色々な言語を耳にすると思います。
これはインターナショナルスクールとして国際性や多様性を認め合う環境を維持するため、また生徒一人一人のアイデンティティ確立のため、母語・母国語を尊重する学校風土が強くあるためです。もちろん、校内の共通言語は英語ですので、授業や学習活動は全て英語で行われますし、会話に加わる全ての人の共通言語で話すというルールがあります。日本語で会話をしていたとしても、その輪の中に日本語がわからない人が一人でも入ってくれば、必ず英語に切り替えて話すように求められます。
これは日本人のご家族から必ずといっていいほど聞かれる質問です。答えとしては、「日本の大学へ進学することは可能です」。ただし、NISから進学できる日本の大学というのは、英語で学士課程を学べる大学に限られることがほとんどです。そのため、日本の高校生と同じように受験して入学するわけでもなく、帰国子女枠で入学できるわけでもなく、日本語での講義を受けられるわけでもないため注意が必要です。詳しくは「インターナショナルスクールから日本の大学へ」をご覧ください。ここ10年ほどで、英語で学士課程を学ぶことができる日本の大学・学部は著しく増えました。今後もこの動きが加速され、日本の大学の国際化が進み、より多様な学問を英語で学ぶことができる日本の大学が増えてくることを願っています。
以上、日本人のご家族によく聞かれる5つの質問でした。
子供に最適な教育環境を与えてあげたいと真剣に検討していらっしゃる保護者の姿に少しでもお役に立てればと思う毎日です。
(インターナショナルスクールと日本の学校の違いをお知りになりたい方はこちらへ。)